撮る人のための実践的写真論

「撮る人のための実践的写真論」児島昭雄(著)→

写真に関する書籍の大半は、撮影テクニックの解説、つまり「機材の性能を引き出す」テーマが主になっています。

しかし本書のように「自分の性能を引き出す」すことをテーマにした良書も、数少ないですが存在します。

著者は、随分古くから活躍されている児島昭雄さんで、その名前は私が子供の頃から目にしているほどです。


この本は、大きく二つのテーマに分けられています。

前半は「写真談義」。

アマチュア写真家の男女二人が聞き手になって、「私」が答える対話形式で書かれています。

抽象的で解りにくい内容を、アマチュア写真家の視線で、より具体的で写真に結びつく説明が繰り広げられています。

実はこの前半部分だけ、OLYMPUSの会員誌向けに書き下ろされた内容を書籍にまとめたものです。

また現在、ホームページ上Fotopusというコーナーで「今日も写真談義」として公開されています。

しかし、公開されて年月が経つので、いつ公開が打ち切られてもおかしくない状況です。

そうなった時のために備えて、ぜひ書籍で手に入れ手元に置いておくことをお勧めします。


さて後半部分は「自問自答」。

「私」自身が作家活動の中で当面している「気づき」が取り上げてあります。

それらを解析しながら、答えを導き出す過程を語ったものとなっています。

後半「自問自答」部分のコンテンツは……

1 写した人が見える写真、見えない写真

2 フォトドキュメントは芸術になりうるか

3 きれいなだけのネイチャーフォトに疑問

4 目撃者としての個人の重み

5 急速なデジタル化の時代に写真家はどう対処するか

6 写真は引き算か?足し算か?

7 肉眼で見たものと、写真で見えたもの

8 今、多様化した写真はどこへ向かうのか

9 高齢カメラマンに送る応援歌

10 写真表現での「演出」を考える

11 作者のこだわりが写真作品の魅力

12 写真の芸術性をどこに求めるか

13 感動すること、表現することを楽しもう

となっています。


「写真論」というと、取り着きにくく、読むことをためらってしまう本が多いのが現実です。

しかし本書は、アマチュア写真家のレベルで、実際の写真作品づくりと結びつけてわかり易く解説してくれます。

そして、写真することの楽しさ奥深さも熱く語ってくれます。

私もそうであったように、カメラが好きで写真を撮るようになり、ずっとカメラばかりと向き合って来た人には、写真そのものの本質を知る上で良いきっかけをつくってくれます。

出版は決して新しくはありませんが、時代と共に変わることのない写真の本質を学ぶには、技術書と写真論の溝を埋る、類書のないお勧めの1冊です。

A5版 全コート紙 148ページ

★こちらからも「撮る人のための実践的写真論」が、ご覧になれます。→