たのしい写真3 ワークショップ篇

「たのしい写真3 ワークショップ篇」ホンマタカシ(著)→

ホンマタカシさんの「たのしい写真」シリーズ3作目は、「ワークショップ篇」です。

写真を「撮る」だけでなく、「見る」「読む」をワークショップを通して、「体験する」「楽しむ」一冊に仕上がっています。

まずは、写真は「撮る」だけではなく、「見る」「読む」も楽しむべきです。

カメラの複雑な操作から解放された現在、ピントや露出やブレや解像度の話から解放されましょう……という、まえがきから始まります。

コンテンツは以下のとおりです。

第1章 写真家はこれまでどんなワークショップを開いてきたか

第2章 ホンマ式ワークショップ

第3章 何が写真の良し悪しを決めるのか?

第4章 今日の写真について

第1章は、ダイアン・アーバスをはじめ、アレクセイ・ブロドヴィッチやリゼット・モデルなど、他の高名な写真家がどのようなワークショップを開いてきたのか、その記録を通して語られています。

ダイアン・アーバスのワークショップに、日本人として唯一、奈良原一高さんが参加された話なんかも登場します。

そして他にも「何かを見て、前に見たことがあると思ったらシャッターを押すな」「カメラは使いずらい方がいい、不自由な方が良い」など、過激な発言も登場します。


第2章は、いよいよホンマタカシさんのワークショップです。

今の時代、自分でカメラを操作して上手な写真を撮る事だけが「写真」ではない。

というテーマを通じて、「現在の写真」は、カメラが上手に扱えなくてもスマホで十分!

もはや、自分で写真を撮ることさえ必要ない自由な時代なんだ……と、妙に納得させられます。

「自分で写真を撮ることさえ必要ない」とは、トーマス・ルフのように、見知らぬ他人の撮った写真から、自分の作品をつくってしまうという現実です。

他にもGoogleストリートビューのモニター表示からスクリーンショットで写真集を作ってしまう写真家など、今一番注目されている手法かもしれません。

肝心のワークショップの内容は、「決定的瞬間」を実際に撮ってみようというものです。

ここでいう「決定的瞬間」とは、事件や事故が起こった瞬間ではなく、目に映る情景の偶然の一瞬の中に、釣り合いや構成や構図をいかに取り込むかということがテーマです。


第3章は、写真の良し悪しを決める要素として、「アフォーダンス(affordance)」という概念が紹介されています。

環境には、あらかじめ様々な情報(アファーダンス)が埋め込まれており、撮り手(知覚する人)はその情報に気づくかどうかが重要という考えです。

さらに個人的に一番印象的だったのは、フランスの記号学者であるロラン・バルトが提唱した、「プンクトゥム(punctum)」という概念です。

簡単に言うと、環境には作者がコントロールできない要素があって、それが写り込んでしまうのが映像の特徴である。

そして、撮影者の狙いとは別に「偶然に写り込んだもの=プンクトゥム」が鑑賞者の意識に触れることが、写真の一番の魅力であるという考えです。

広告写真なんかは、スタジオという「プンクトゥム」を追い出した環境で撮影し、「プンクトゥム」を注意深く取り除いたものであるということです。

この章での、ワークショップの内容は、「ニューカラー」の作品を実際に撮ってみるというものです。

「ニューカラー」とは、環境の中に散らばって存在する無数の情報(アファーダンス)の中から、ウィリアム・エグルストンのように、自分にとって必要な情報をゆっくり知覚しながら撮影するということです。


第4章は、ポストモダンへの流れとして、「写真の楽しみは、撮ることだけじゃない」「自分で撮らないという方法」が紹介されています。

「写真家=カメラを上手に操作する=撮る」という大前提を一回放棄してみるという考えです。

上手く撮れることは、それほど重要ではなくなってきた(むしろ足かせになることも)そうです。

あのトーマス・ルフも「Photography? もうImageでいいでしょう」と言ったそうです(笑)

著者自身も「撮る時も作品をつくるときも、絶えず選択の連続であり、「撮る」部分を他人に預けても、他の「選択」の部分で作品はつくれる。写真を楽しむのは撮影することだけではない」と……

この章でのワークショップの内容は、オリジナル写真を切り刻み、受講者が再構築(パッチワーク)する試みです。

つまり、オリジナリティーという幻想を、文字通り切断した写真の断片を、他者が「プンクトゥム」というイメージで貼り合わせて新たな作品を構築するということです。

どんな作品が出来上がるのかは、本書を読んでのお楽しみです。


どうです?難しい写真の読み方を、これほどまでに楽しく愉快に理解させてくれる本に、私はお目にかかった事はありません。

読む前と、読んだ後では、写真に対する見方が変わってきます。

これは絶対に買いでしょう!(笑)

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